馬越康彦の日記

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口パク禁止論に関して

そもそも踊りながら、歌も一線級などということは考えられない。古代の人類が躍りながら何かを謡っていたとか、牧羊に携わる民族が、口笛とともに歌を口ずさんでいたというのは想像に難くないが、歌や踊りがそれぞれ芸術の域にまで高められた後に――その究極的なものがクラシック音楽であり、オペラであり、ザ・ビートルズである――マイケルジャクソンを筆頭に再び踊りと歌を一つにしてしまった(例えばプロモーションビデオ)のは許しがたい芸術に対する暴挙であり――それ故にトルクメニスタン大統領は口パクを「音楽芸術の発展に悪影響」とし、禁じたわけであるが――口パクなるものは芸術に対する冒涜であることは間違いない。
天皇陛下があの国民的気ちがいに対してなぜあのような芸術に対する冒涜行為を許してしまったのかは今もって理解に苦しむが、踊るなら踊りで勝負し、歌うなら歌で勝負しろと言いたいのは、ひとえにフジテレビのプロデューサーだけではあるまい。(平成25年3月19日の朝日新聞より)