馬越康彦の日記

思いついたときに記事を更新

真摯な男

パスカル同様に30年ぶりにキェルケゴールの「死に至る病」を手に取ってみた。岩波文庫のわずか200p余りの作品のほとんどすべてのページに鉛筆でアンダーラインがはいっており、「パンセ」同様、余りのなつかしさに若き日々を思い起こした。「現代の批判」と同じく、これほど誠実に神とキリスト教と向き合っている著作は無いと言ってもいいほどである。
ニーチェ同様、『我思う、ゆえに我あり』という近代哲学の祖、デカルトを軽く一蹴し、シェイクスピアのあの深さに何度も言及しているこの人もまた本物であった。ドストエフスキーの「白痴」を読んで、すぐにこの作品を読み直したのだが、世の中には奇蹟のようなことが同時代にいくつも発生しているという思いを強くした。
この人も今もう一度見なければならない。2013年を同じく生きていれば、どれほど心強かったことだろう。とにかく誠実な人である。人を信じることができなくなった人、何かを解決したいのだけれど解決に至らない人、こうした方々にとっては至高の著作と言ってよいと思う。幸い私は、「不安の概念」をまだ読んでいない。今は、ルソーに浸っているが、まだまだ楽しみはいっぱいあるのがありがたい。