馬越康彦の日記

思いついたときに記事を更新

30年ぶりのパスカルとの邂逅

書棚にあるパスカルの「パンセ(瞑想録)」(新潮文庫)を手に取ってみた。パスカルと言えば誰もが知っている『人間は考える葦である』が真っ先に思い浮かぶ人物。書棚にはあったものの、読んだ記憶がない。
ところがページを繰ってみてビックリ!あちこちにアンダーラインがしてあり、実は18歳ころに読んでいたのである。今日はその一節をご紹介したい。
釤106 それぞれの人のもつおもな好みを知れば、たしかにそのそれぞれの人の気に入ることができる。ところが各人は、幸福に関して持つ考えそのものの中で、自身の幸福に反するいろいろの気まぐれをいだく。これはどうにも始末のつかぬ一つの奇怪事である。”
こういった箴言がずっと続く。私はアンドレジッド氏の「狭き門」をことさら好み、アリサとジェロームの対話の中でよくパンセが出てくるのを長い間気にかけていた。
今後は「パンセ」をもう一度読み直し、彼の考えを追思惟してみたいと思う今日この頃である。
(私の生活の中で、もう一度読み直すべき著作があまりにも多いことは、自分の哲学を形成し終えた今、暇つぶしにはもってこいの機会であると考える)。
人生の晩年で、「読んでいる」と思っていたものを「読んでなく」、「読んだはずがない」と思っていたものを「読んでいた」というのは、これまた一つの奇怪事なり。