七覚支
以前は「七覚支 テーラワーダ」でググると、七覚支の具体的な内容がネットで読めたのだが、今は見当たらないので、記しておこうと思う。
1.念覚支(サティ サンボッジャンガ)
気づく。
あれこれいろんなことを考えないで、今の瞬間のことだけに気づく。第一番目の念覚支、いわゆる「気づき」を正しく充分に実践していると、残りの六つの覚支は自然に現れてきます。
過去や未来のことで頭を混乱させずに、今よりも一秒前のことにも一秒先のことにも引っかからずに、ただ今の一秒、今の一秒、今の一秒…と、今の一秒だけに絶えず気づいていると、結果として想像を絶するほど智慧のある人間になる。
瞑想中、妄想したなら、客観的に「今、妄想している」と明確に気づき、きちんと確認することが大切。
2.択法(ちゃくほう)覚支(ダンマウイチャヤ サンボッジャンガ)
因果関係を知る。因果関係は今のデータを観察していると自動的に現れてくる。
「こうだから、こうなっている」と一秒一秒、常に気づいていると、おのずと見えてくる。気づきを分類していく。欲、怒り、無知といった具合に。
3.精進覚支(ウィリヤ サンボッジャンガ)
気づき(念覚支)からスタートして、分別能力(択法覚支)が身についてくると、自然にやる気(精進覚支)が現れてきます。
妄想したくてたまらないこの頭に、「今の瞬間だけに気づきなさい。今の一秒のことだけをやりなさい」と言う。
4.喜覚支(ピーティ サンボッジャンガ)
気づきからスタートして、分別能力が身につき、頑張って精進を続けていると、非常に高いレベルの喜びが自動的に現れてきます。喜びが現われると、さらに頑張るようになります。
5.軽安(きょうあん)覚支(パッサッディ サンボッジャンガ)
瞑想をして第五番目の軽安覚支が現われたら、心と身体の重さはなくなって非常に軽くなり、まるで宇宙空間に浮いているかのように軽くなるでしょう。五蓋という重石が全部取り除かれた時、心は軽くなり、宇宙空間に浮いているかのごとく軽くなるのです。
緊張するのではなく、いつでも軽くアプローチして、「今なにができるでしょうか」と一秒単位で物事を見るようにする。
6.定覚支(サマーディ サンボッジャンガ)
禅定のこと。心が統一すること。神通力が生じるのはこの時。
7.捨覚支(ウペッカー サンボッジャンガ)
ウペッカーは「極限に冷静、寂静」という意味です。すべての能力が揃うと、心は極限に冷静になるのです。極限に冷静になったところで解脱を体験するのです。
捨覚支は定覚支の上のレベルです。サマーディ(定)は気分がよく、喜びを感じるものですが、それに執着してしまうおそれもあります。
そこでサマーディ状態に達したとしても「サマーディも因縁によって起きたものだから因縁が変わると消えるものである」と理解するのです。
どんなに楽な状況であっても「執着する必要のない無常の現象である」と観察すると、捨覚支が生まれてくる。
智慧の完成。「覚り」の世界。
宿命智(自分の過去をさかのぼって思い出すこと)や天眼智(他の生命の生まれ変わりを見ること)が生じなくても、漏尽智(煩悩が尽き、やるべきことが終わったこと。悟りの智慧)は最後に必ず生じます。宿命智や天眼智もあって三明が生じた方が恰好いいのではないかと思われるかもしれませんが、漏尽智が生じ、三毒(貪瞋痴)がなくなると、貪瞋痴が働かないこと故のあまりの安穏(究極の楽)に、もはやさかのぼって宿命智や天眼智が生じるように修行を続ける動機はもう働かないでしょう、現実的には。
これですべて終わりです。なすべきことはなされました。これ以上はありません。